今回から神戸市営地下鉄の振替乗車票(代行乗車票)を解説していく。なお、振替輸送と代行輸送は、言葉こそ違えど同様の意味合いだ。詳しくは記事番号416にて解説しているため、そちらを参照願う。

関西の振替輸送は磁気カード式乗車券の普及にともない、平成11年にパターン化したが、神戸市営地下鉄はこのパターン化に参画しなかった。

そもそも神戸市営地下鉄は鉄道事業者というよりは行政の色合いが強く、振替輸送の発受すらスムーズにできなかった。

JRで輸送障害が発生した際に、他の私鉄が全て振替輸送を受託しても、神戸市営地下鉄だけが受託しないことも多かった。

また、磁気カードやICカードのいわゆるカード式乗車券の取り扱い方についても、他の社局間では共通して事故発生前に入場(旅行開始)している場合は振替輸送対象としていたが、神戸市営地下鉄だけがこれを頑なに拒否していた。

そのため、神戸市営地下鉄に対して振替輸送を依頼する各事業者は、輸送障害の度に困っていた。

振替輸送を受託してもらえたとしても、カード式乗車券が全て振替輸送対象でないため、旅客に対して一律の案内ができなかった。

例えばJR三ノ宮では、カード式乗車券で旅行途中の旅客に対し、阪急、阪神へ乗車する場合は振替乗車可能だが、神戸市営地下鉄へ乗車する場合は振替乗車は不可と案内しなければならなかった。

しかし、これが駅係員も旅客も全く周知できておらず、地下鉄の改札口でカード式乗車券の旅客が乗車を断られトラブルになるケースが目立っていた。

また、制度上も全ての社局においてカード式乗車券を振替対象としなければ整合性がとれなかった。

(例)

本来の乗車予定:JR京都→新長田(カード式乗車券)

不通区間:大阪以西が事故により不通

振替乗車
梅田→三宮(阪急か阪神にて振替輸送)
三宮→新長田(神戸市営地下鉄にて代行輸送)

新長田は私鉄に駅がなく、神戸市営地下鉄による代行輸送でしか救済できないため、上記のように三宮で乗り換えが発生する。

この場合、振替乗車票は三宮で下車の際に回収となり、地下鉄三宮で再交付が必要であった。

本来ならJR大阪駅で、阪急、阪神は振替輸送対象であるが、神戸市営地下鉄は対象外である旨を旅客に案内しなければならなかったが、神戸市営地下鉄が対象外と理解できている係員は皆無であった。

実際に、筆者が大阪駅の営業総括助役に振替輸送の詳細をレクチャーしていた際、神戸市営地下鉄がカード式乗車券を振替輸送対象外として乗車を断っていることを教えると大変驚いていた。

旅客は、目的地の新長田まで振替乗車が可能との案内により梅田から振替乗車をスタートする。しかし途中の地下鉄三宮で、前途の三宮〜新長田は別途運賃を支払えと言われるのである。無茶苦茶な話だ。

ちなみに、新長田の振替対応駅はもうひとつあり、。神戸高速鉄道の西代も振替対応駅となっている。西代へ乗車した旅客は全区間が振替輸送扱いとなるが、新長田駅とは1キロ以上離れており、対応駅としての機能は果たせていない。

また、私鉄の場合は板宿の旅客が神戸市営地下鉄でないと救済できない。

(例)

本来の乗車予定:山陽高砂→板宿(カード式乗車券)

不通区間:明石以東が事故により不通

振替乗車
明石→新長田(JRにて振替輸送)
新長田→板宿(神戸市営地下鉄にて振替輸送)

このケースも、新長田までのJRは振替輸送可能だが、新長田〜板宿は別途運賃を支払えと言われトラブルとなっていた。

また最悪なのは、カード式乗車券で乗車中に新長田や板宿で前途運転見合わせとなるケースだった。

JRなら、新長田で前途運転見合わせとなった場合は、まず神戸市営地下鉄に乗車しての振替輸送となる。

逆に私鉄なら、板宿で前途運転見合わせとなった場合は、神戸市営地下鉄に乗車して新長田へ出てJRの振替輸送となる。

しかし何れのケースも、最初の振替輸送となるのがカード式乗車券による振替輸送を認めない神戸市営地下鉄であるがゆえ、まず地下鉄の運賃を支払い、他社に乗り換える時から振替輸送開始となる。

定期券や普通切符の旅客は振替乗車でき、カード式乗車券の旅客だけ振替乗車できないというのは、旅客は心情的に納得できないため苦情が多く、次第に大きな問題となっていった。そのため、JRも私鉄も神戸市営地下鉄への振替輸送を依頼しない時期があった。

しかし、依頼しなければ新長田や板宿の旅客は全く救済されず、この問題は大変悩ましいものとなった。

筆者は、国土交通省近畿運輸局鉄道部管理課にこの状況を伝え、行政が積極的に介入すべきだと問題提起したが、あくまでも民民の問題であり、行政は介入できないとの回答であった。

なおJRはその後、ラッシュ時の輸送障害で、新長田が不通区間に含まれる場合等は、また神戸市営地下鉄に代行輸送の依頼を行うようになり、地下鉄側で受託が可能だった場合は代行輸送を実施した。

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神戸市交通局 代行乗車票 三宮〜新長田
JR神戸線輸送障害発生時用
平成17年秋ごろまで

切符のほうはご覧のとおりA型に近いサイズの小型軟券が上下に綴られている様式だ。

発行日付押印欄の◯が、実際の印に比べて小さく、かなり印がはみ出している。なぜこんな様式となったのか不思議なくらいだ。